逆転への取り切り!〜取り切りの大切さ〜

動画解説

本日の動画

今回の解説動画は、9ボール世界選手権2024の決勝戦、Fedor Gorst対EKLENT KAÇIの試合を解説します。残念ながらYouTubeにはハイライトしか残っていませんでしたので、ハイライトでご了承ください😅
また、今回はネタバレしてしまいますので、結果を先に知りたい方は、下記の動画を見てから、考察を読んでいただけますと幸いです。

🎯 勝負の分かれ目 – Clutch Moment

この試合のターニングポイントは、第28ラックの取り切り!

13−9で負けていたKAÇI選手が怒涛の巻き返しで、13−14と逆にリーチをかけて、挑んだブレイクがなんとノーイン!
さて、Gorst選手は再度逆転することができるのか!?

🏟️ 試合の流れ

ここからネタバレがありますので、ご注意ください。

2024年はGorst選手の年であったと言っても過言ではないほど、大活躍した年でした。
ワールドプールマスターズに始まり、この9ボール世界選手権、そしてUS Openを制覇する、まさに破竹の勢いでした。

この9ボール世界選手権も敵なしと思われるほど圧倒的な勝利で勝ち進め、実は決勝戦も試合序盤からGorst選手優勢の状況でした。

ところが、試合中盤に差し掛かり、Gorst選手のなんでもない球のシュートミスが目立つようになり、KAÇI選手がそこをきっちり取り切っていき、徐々に追いついていきました。

特に、13−9のKAÇI選手の空クッションセーフティが炸裂し、その後フリーボールを与えたところで取り切り。また、13−12の時にGorst選手の空クッションセーフティが決まったと思えば、KAÇI選手のお返しで空クッションコンビで完全に後半はKAÇI選手のペースになったところでした。
(正直Clutch Momentをここにしようか迷ったくらいです笑)

さて、そんな中で、13−14とついにGorst選手が逆転を許してしまった28ラックで、KAÇI選手のブレイクがノーインでGorst選手に渡ります。

1番のシュートはありますが、3番が近くていやらしいですね。
さて、Gorst選手の選択はいかに!?

🎥 ショット解説

Gorst選手のこのラックはこちらの動画でご確認ください。
少々長いですが、この取り切りはぜひ見ていただきたいです!
※途中、観客席のお茶目なAlcaide選手を見ることもできます笑

▶️ 状況

  • 1のシュートがあるが、手球の進行方向に3番があり、絶対に当たってしまう
    さらに、3に当てた後8があるため、3も移動させることが困難。
  • KAÇI選手に回したら、優勝されてしまうかもしれない

🛠 分析

このショットのポイントは、究極の90度分離の理解です!
動画だと斜めになっているので分かりづらいですが、上から見ると大体下図のような感じだと思います。

私が90度分離の理解と言っているのは、このショットは少なくとも2つの90度分離を理解する必要があります。

まず1つ目の90度分離は手球が1番に当たった時です。仮に1番に厚く当たりすぎると、3番へも厚く当たってしまうため、2番のシュートがかなり厳しくなってしまいます。
最悪の場合は3に手球が隠れて直接当てることもできないということも考えられますね。

2つ目の90度分離は1番に当たった後の手球と3番の90度分離です。こちらは1つ目で考えていることに似ていますが、3番に薄く当たらないと、Gorst選手がやったように長クッションに入れてから元の手球の位置くらいまで戻ってきません。

最後にこのショットでもう一つ肝なのは、力加減になります。
上記二つの的球へのタッチがどちらも薄くなると分かったので、この場合、手球が動きやすくなります。そのため、元の位置に戻って来るには、長クッションから長クッションに戻ってくるくらいの力加減で撞くと良さそうですね。

さて、取り切りについては、この後も続きます。
続いては、2番へのショットになります。
私ならちょっとでも3番に近づけようとなるべく引こうと考えてしまいます。
ただし、流れでお伝えした通り、これまでGorst選手は自分のシュートミスで取られてしまう流れであったので、ここのショットはかなり正確性を重視したショットになっています。
ここは、動画を参照していただきたいですが、力の入っていないとても簡単そうなショットです。
おそらく6割くらいの力加減で撞いているようですね。
そして先ほどと同様にそういうショットでも90度分離でちゃんと3番に出るところに出せているというのがすごいところです!

この後、ハイライトのため、割愛されてしまいますが(なのでハイライトは本当は避けたいです、、、)
実は試練が続きます。
配置としては何も問題なさそうに見えますが、この5番が6番が絶妙な位置にあってとても構えづらいです。

また、その後6番には綺麗に出せたものの、7番が8番で微妙に撞きづらいです。

ですが、さすがトッププロ選手!
これを取り切って見事ヒルヒルに持ち込みました!!!

イフストーリー

今回の取り切りは素晴らしいものでしたが、もし2番のシュートを外してしまっていたら結果は変わっていたのでしょうか?

  • 2に厚く当たってしまって外す
  • 2に薄く当たってしまって外す

①2に厚く当たる

この場合、手球は4番9番にくっつくような形で移動します。一方で、2番は力加減的にかなり動きそうなので、テーブルセンターよりも右上までいきそうです。
したがって、この場合はアンドセーフ(シュートを狙いつつ、外しても相手に難しく残る)になりそうです。

②2に薄く当たる

この場合、手球が4番9番の方に向かうのは変わりありませんが、手球が①よりも走るため、4か9に当たって止まるか、下の短クッションくらいに入りそうです。
一方で、2番は赤線の動きをしてこれも短クッションに来てしまいそうです。
したがって、この場合は手球と2番が近づく位置関係になるので、相手に簡単に残ってしまいそうですね。

今回のイフストーリーとしては、シュートを狙いつつ、外すなら厚めに外した方が良いということがわかりました。もちろんシュートミスをしないのが一番ですが、あらゆる可能性から、もしミスしてしまってもこれなら相手にも難しいという選択肢を取れるように考えていくのが、簡単に取り切らせないコツにもなると思います。

📝 まとめ

今回の「clutch moment」は、大切な場面での取り切りのイメージについて、90度分離をメインに解説していきました。セーフティというのも大事な選択肢ではありますが、こういった難しい配置を取り切ることで相手にプレッシャーを与えられると同時に、自分自身の自信につながるという点で非常に大事な選択でしたね。

気になることや「このショットも解説して!」というリクエストがあれば、X(@position_taro)までお気軽にどうぞ!

タイトルとURLをコピーしました