本日の動画
今回の解説動画は、プレミアリーグ2024の決勝戦、Shane Van Boening対Ko Pin Yiの試合を解説します。
試合動画に入る前に、プレミアリーグについて、簡単に触れておきます。
名前の通り、世界トッププロ選手がリーグ戦を行ってステージごとに下位数名が脱落していき、最終的に勝数の多い上位2名が決勝戦を行う形式です。リーグ戦ということもあり、1試合のセット数はかなり少ないですが、色々な選手の試合がたくさんみれるので、時間がないけどビリヤード動画を見たい!というときにおすすめです。
さて、本題に戻って、今回取り上げるのは、Shane Van Boening選手になります!よく頭文字をとってSVB選手と呼ばれています。
Boening選手はアメリカが誇るNo1プレーヤーで数々の大会で優勝経験のある実力のあるベテラン選手です。特に、Boening選手はバンクプールと呼ばれるバンクショットオンリーの大会でマスワリを出したこともあるほど、球をよく知っています。
🎯 勝負の分かれ目 – Clutch Moment
この試合のターニングポイントは、第10ラックのキャノンショット!
前のラックをフリーボールから取り切った次のラックでした。Ko Pin Yi選手のショット後のBoening選手の選択はいかに!?
🏟️ 試合の流れ
5−4でBoening選手が勝っている状況からKo Pin Yi選手のブレイクが始まります。
ただ、1番は入ったものの、次の配置になりました。

2番が4番に隠れており、クッションから当てることしかできない状況です。
この選択肢としてシュートアウトもあったのですが、クッションから当てるのはさほど難しくないため、通常のショットを選択します。

絶妙な位置に手球を持っていくことができました!!穴前でちょっと構えづらくて嫌な位置ですね。
さらに2番が6番を蹴ったことにより、2番もシュートが薄くて嫌な感じです。
さあ、Boening選手はどんな選択肢を取ったのでしょうか?
🎥 ショット解説
Boening選手の動画はこちらになります。
▶️ 状況
- 手球がコーナー穴前にあり、構えづらい。
- 2番は見えているものの、シュートが薄く、嫌な感じ。
🛠 分析
このショットのポイントは、ズバリ!90度分離をちゃんと理解しているかというところになります!
さて、ではショットを定点で止めてみたいと思います。

確かに、この配置であれば、ビリヤードを何年かやっていればワンチャン9番が入る可能性があるというのは、選択肢には出てくると思います。
ただし、このキャノンショットは9番が穴前に残ってしまうリスクがあります。そうであるなら、セーフティをとってみた方が良い気もしますね。(こちらはイフストーリーで)
でもBoening選手はこの厚みを確認して2→9のキャノンがいけると確信していました。
まず、Boening選手は撞きづらい配置にもかかわらず、手球のほんの少し左側を撞いているのがわかるでしょうか?
この場合順ひねり(用語集を参考ください)になり、手球が2番に当たった後に接地時間が少なくなり、進行方向に飛び跳ねるようになります。今回の場合は9番方向に一直線に向かうということですね。
もし左を捻らないと、この距離と撞きづらい状態であるため、手球に前進回転がかかってしまい、9番に薄く当たるようになってしまいます。
そのため、Boening選手は少し手玉の左を撞いていたわけです。

そして、何より大事なのは左をひねったとしても9番に厚く向かうように当てる90度分離を完全に理解していることが大事になります。
Boening選手の試合を観ると、90度分離がいかに大事かというのがわかりますね🎵
90度分離についても別の記事で取り上げたいと思います!!!
イフストーリー
さて、それではもし2−9キャノンではなく、セーフティを選択したらどうだったかを考えてみたいと思います。
上記の画像で2番の上に当てるか、真ん中くらいに当てるか、下側に当てるかで考察してみたいと思います。
2番の上の方に当てる

この場合、2番の上をかすめるようにしないと、左上のコーナーにスクラッチしてしまいます。
また、上をかすめると9番に当たってしまいそうで、そうなると手球と2番を隠すのがかなり難しそうです。この選択肢はあまり良くないですね。
2番の真ん中に当てる

続いて、2番に厚く当てる方法です。
この場合、手球は2番のところでストップします。
2番は短クッションに入り、9番の方向に進みます。
この時9番の下側に当たれば難しく残せる可能性もありますが、それ以外が手球と2番が見えてシュートもありそうなので、一番良くない選択肢だと考えます。
2番の下の方に当てる

この場合、手球は6番や8番に隠せそうです。ただし、6番を蹴ってしまったりすると手球が丸見えになってしまいます。また、2番はちょっとの力加減で穴前に残ってしまいそうですね。ただ長クッションに残せれば、シュートはなくできそうです。
セーフティをとるならこの選択肢が良さそうです。
ただし、考察していった通り、3通りともかなり難易度の高いセーフティになってしまうため、そうであるなら、2−9キャノンは十分に選択肢としてもありですね!!!
もちろん2−9キャノンは9が穴前に残ってしまうリスクもあるので、その点は注意しなければならないですが、ショット選択としては大いにありということがわかりました。
📝 まとめ
今回の「clutch moment」は、90度分離を理解してショット選択をするということでした。
Boening選手はバンクショットや出しがお手本のようにうまく、精度のショットを連発してくれるので、とても勉強になります。
Boening選手のプレースタイルについては、こちらの記事で解説しています。
clutch moment以外の素晴らしいショットについては、こちらの記事も併せて読んでいただけますと幸いです。
気になることや「このショットも解説して!」というリクエストがあれば、X(@position_taro)までお気軽にどうぞ!