危険を漂わせろ!〜圧倒的シュートレンジ〜

動画解説

本日の動画

今回の解説動画は、ヨーロッパオープン2025の決勝戦、Joshua Filler対我らが日本のエース!大井直幸の試合を解説します。
まずこれほど大きい大会で日本人選手が決勝戦まで来れるなんて本当にすごいです!!!
ですが、この動画では大井選手ではなく、Filler選手を取り上げたいと思います!
(後日必ず大井選手も取り上げたいと思います!)

Filler選手については、いくつもの世界大会で優秀な成績を収めているため、ビリヤードをやっている人なら聞いたことがある名前なのではないでしょうか。
彼の魅力について迫っていきたいと思います!!!

また、今回もネタバレがありますので、結果を先に知りたい方は、下記の動画を見てから、考察を読んでいただけますと幸いです。

🎯 勝負の分かれ目 – Clutch Moment

この試合のターニングポイントは、第11ラックのロングレンジショット!

終始ゲームを支配していたFiller選手が2連マスワリをした後のブレイク後の最初の2番を外してしまいます。ただし、2番の厚みが絶妙でうまく3番に出せなかった大井選手がなんとか当てて、Filler選手に再び番が回ってきました。

🏟️ 試合の流れ

ここからネタバレがありますので、ご注意ください。

この試合については、大井選手の不運も重なり、Filler選手が優勢で試合が進んでおりました。
この試合を決定づけたショットが第11ラックのショットだと私は思っています。

第9セットに入る時点で7−1でFiller選手が勝っていましたが、さらにそこで2連マスワリを取り、9−1としたところで第11セットになります。

第11セットのブレイクで1番が入り、2番がかなり薄いですが、シュートがある形でした。

しかし、ここは決めきれずに大井選手に回してしまいます。
ただし、その2番の振りも絶妙で、3番へ当てに行くのが精一杯というところでした。

再度回ってきたFiller選手の配置がこちらです。3番がかなり薄く、しかもロングショットであるのに6番が微妙に嫌な位置にあるという形です。

🎥 ショット解説

Filler選手の動画はこちらになります。

▶️ 状況

  • 3のシュートがあるが、かなり遠く、3番がレールにくっついている。
  • 手球が6番と一部重なっていて、ちょっといやらしい配置。
  • 次の4番を考えると、長クッションでバタバタさせたくても、5番7番が邪魔でバタバタはリスクが高い。逆に押しても4番に当たってギャンブルショットになってしまいそう。

🛠 分析

このショットのポイントは、時にはロングレンジでも攻める必要があるということです。
(常にシュートを狙えば良いというわけではないので、ご理解ください)

現在の配置は下図のようになっていて、実際には3番に厚くストップショットをしてもシュートは狙えないセーフティはできそうです。
ただしその場合、手球と3番は丸見えになる可能性が高く、3番付近に球がまとまるため、大井選手がセーフティを狙いやすい配置になってしまいます。

また、試合のスコア的には9−1とリードはしているものの、トッププロ選手同士なら、何かをきっかけに取り切ってしまうことも十分考えられます。

もう一点このショットにはすごいところがあります。
それは、4番への出しについて、9番にわざと当てて4に出すことを考えている点です。
スローで見ていただくとわかるのですが、このロングショットにも関わらず、Filler選手は若干右にひねって9番に向かうようにコントロールしています。
この狙いとしては、本来は9番に厚く当てて、手球を9番の位置に持っていき、左下のコーナーへポケットする想定だったと思います。惜しくも9番に若干薄く当たってしまいましたが、十分セーフティできる位置になりました。

ロングレンジのシュートはFiller選手の得意としているところでもありますが、そのキュー出し(手球に当たってからのキューの軌跡)が一直線でとても美しいです。
ビリヤードはアートですね!笑

極意

今回は仮の場面を想定するのではなく、今回のショットのメリットについて考察してみたいと思います。

  • 純粋に取り切りに近づける
  • 自分のビリヤードに対して自信を持てる
  • 相手にプレッシャー/絶望を与えられる

取り切りに近づける

攻めることによって成功した場合に、自分のターンを続けられるので、取り切りに近づくことができます。
ここで大事なのは、他の選択肢の確度を判断するということです。

今回の3番をシュートミスした場合、周りに球もないので、簡単な配置で残ってしまいそうです。
もしかしたら、セーフティの方が良いかもしれませんが、先ほど書いた通り、セーフティでも相手にセーフティ返しをされてしまう可能性も高そうです。
また、もしもシュートが入っても例えば9番の裏に隠れて4番を狙えないとか、スクラッチしてしまっては元も子もありません。

このように、シュートの際には、①他の選択肢が無いのか?(シュート(どのポケットか)、セーフティ)、②シュートを外した場合に相手にどう残るのか?③シュートが成功した場合に次の球を扱いやすいか、④セーフティをした場合に相手からフリーボールをもらいやすいか、相手が何もできないか
といったことを考える必要があります。

ただ、試合中に全てのことを考えていたら到底時間が足りないので、その引き出しをプロの試合を見て、いつでも引き出せるようにしておくのがこのブログの目的でもあります!!!

ビリヤードへの自信

ビリヤードがスポーツに分類されるのは、日によってどころか1分前の自分自身のコンディションも大きく変わるからだと思っています。
私なんかはJPAの前に練習している時は調子が良くても試合で大負けなんてこともしょっちゅうあります笑

その原因の一つは自信が影響しているのは間違いないです。
大抵外す時の原因としては、「この球を外したらどうしよう」とか「試合に負けちゃう」とか今の球に関係ないことを考えてしまっていることが大半だと思っています。

ですが、今回のような難しいレンジのショットを決めることができれば、
「今日は何でも入る!」と思って自信を持って撞くことができます。

皆さんも思ってもみない難しい球を入れられた時はとても喜びを感じた経験があるのではないでしょうか?ロングレンジを決めるメリットはこんなところにもあらわれると思っています。

ただし、そう思い込んで、ロングレンジを何も考えずに攻め続けるのは、1つ目の考察に書いたシュートの選択肢を度外視してしまっているので、そこを忘れないようにしましょう。

相手にプレッシャー/絶望を与えられる

個人的には実はこれが一番大事な要素だと思っています。

ビリヤードは究極的に言えば、セーフティ以外は相手との対話を必要としない、スポーツです。
その中で、相手を上回りたいなら、もちろん技術的な要素は必要になります。
ですが、技術に劣らずメンタル面も非常に重要な要素です。

試合中に「これを外したらこの人は決めてしまう(プレッシャー)」「この人には勝てない(絶望)」を思わせることができれば、相手は思考を止めてしまうことだってあります。
こうなればこちら側が優位に試合を進めることができます。

まさに今回のFiller選手は圧倒的なシュート力で試合運びをスムーズにできていたと思います。(もちろんプロ選手のメンタリティはずば抜けておりますが、そこはご了承ください)

(補足)相手の方が技術的に優っていたら?

では逆に我々が大井選手の立場だったらどうでしょうか?(大井選手、ごめんなさい)

上であげた極意に矛盾するようですが、試合中は相手のことは考えないというのも大事です。
ビリヤードは全セットマスワリさえされなければ、必ず自分もプレーできます。実際にプロ選手で全セットマスワリというのはほぼないです。(数年前に赤狩山プロが羅プロ相手にやっていましたが)
ですので、どんなに上手い相手と試合になっても、回ってきたらどうするというのを一番優先的に考えるのがポイントです。

なお、別の記事にしたいと思いますが、試合中の相手のプレーを見なくて良いかというと、そうではないです。相手のプレーを見る中で苦手な配置などがわかる時もあるからです。

📝 まとめ

今回の「clutch moment」は、相手に危険なイメージを持たせるためのロングレンジの攻めについて解説していきました。
Filler選手自身が証明している通り、いくつもの大会で勝てるのはやはりこのロングレンジシュート力だと思っております。つまり、ビリヤードは練習も大切ですね!!
ただ、最初からロングレンジばっかり練習するのはコスパが悪いと思うので、ロングレンジも大事なんだということを今回はわかってもらえれば幸いです。

気になることや「このショットも解説して!」というリクエストがあれば、X(@position_taro)までお気軽にどうぞ!

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